· 

これからの目標

 開業して6年以上が経過し、振り返りをすることが多くなりました。

 患者さんの数を例えば倍にしたとすれば、売り上げと世間評価?は上がるのかもしれませんが、それぞれの患者さんにかけられる時間は確実に少なくなります。診察も雑になり、クレームも増えることでしょう。そうすると、何のために訪問診療を始めたのか分からなくなってしまいそうです。

 自分は、一体何を目指すべきなのか?

 それがはっきりしないと、頑張る理由がみえなくなってしまうのです。そして、「ゴールのないマラソンを走る漠然とした焦りと不安、消耗感」(姜 琪鎬先生の本で載っていた表現)という感覚に押しつぶされそうになります。

 そんな時に、この本に出会いました。

 そして、チームマネージャーとしての自分という役割に気がついたのでした。(「今更かよ!」 という副院長みたいなつっこみはなし (^_^;) ) 

 私たち医師は、病院で研修を受けますが、病院では、より正しい治療が第一とされています。毎日勉強もしたし、技術を磨いています。今はないのかもしれませんが、声を荒げたりする指導医も少なくありませんでした。訪問診療でも、それは同じだと思っていましたが、病院以上に様々な職種の人たちが関与するなかで、病院の常識は非常識以外のなにものでもないのでした。

 特に訪問診療においては、病院のように治療というレールに乗る必要はありません。

 患者さんと相談して、患者さんが望む生活を支えるために医療が活用されます。病院のように治療第一ではないのです。そしてその生活を支えるのは、家族であり、ヘルパーさんであり、ケアマネージャーさんであり、訪問看護さんたちなのです。彼ら彼女らが安心して仕事をできるようにするのが、訪問診療医の役割で、前面にでる必要もないと考えを変えることができました。

 そして、安心して仕事をするためには、何をいっても怒られない、叱責されないという精神的安全性がベースになければならないことも改めて気づきました。

 これからは、(できるかどうかは分かりませんが)安心して相談できる相手として、振舞えるように頑張りたいと思います。

 宜しくお願いします。